GLI011 糖尿病と口渇多飲


糖尿病の初期症状は、しばしば、多尿、口渇、多飲といわれますが、 実際には、糖尿病の初期は無症状、または症状が自覚できない状態が多く、 のどの渇きや多尿を感じるころには、糖尿病がある程度進行している ことが多いようです。

糖尿病は高血糖状態になると、細胞から水分が浸透圧の関係で失われ、脱水状態になります。

細胞から出た水分は、尿となって体外に排泄されます。尿の量が増え(多尿)、 細胞が脱水状態になるので水分を必要となります。すると当然のどが乾きます(口渇)。 そして、飲み物をたくさん飲んでしまいます。(多飲)

しかし、やっかいなのは高血糖状態が続いていると、細胞と水分の浸透圧のバランスが崩れます。細胞は脱水症状のままで、飲んだ水分は尿となって排泄されてしまいます。

こうして、水分を多量に飲んでものどの渇きが癒されずに尿の量ばかりが増えるという症状が典型的です。

このような糖尿病の初期症状に『多尿』『口渇』『多飲』が あります。高血糖が原因で『多尿』『口渇』『多飲』の症状がでるまでタイムラグがあるので初期の段階では無症状といわれるのです。

<糖尿病ケトアシドーシス>

糖尿病はインスリンの作用不足があり、細胞内にうまくブドウ糖が取り込めなくなる病気で、そのため慢性の高血糖状態が生じます。

高血糖にもいろんなレベルがありますが、非常に重症の糖尿病を考えてみましょう。

血糖値が300~500mg/dl以上もあり、口渇・多飲・多尿・腹痛・悪心・嘔吐・脱水・意識レベル低下、尿中ケトン体が強陽性などの症状・所見があれば、糖尿病性ケトアシドーシスと診断できます。

もちろん血中ケトン体も高値であり、生理的食塩水の点滴・速効型インスリンの静注など緊急的治療が必要となります。

糖尿病ケトアシドーシスの時の総ケトン体値は、3000μM/dl以上(26~122が基準値)となります。

糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠乏による全身の高度の代謝失調状態です。

強調しますが、前提にインスリン作用の欠乏があり、それが全ての出発点です。

つまり、インスリン作用の欠乏がなければ、糖尿病ケトアシドーシスは絶対に起こらないのです。

『インスリン作用の極度の低下、インスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン・カテコールアミン・成長ホルモンの過剰』

などにより、全身の高度の代謝失調、糖利用の低下・脂肪分解の亢進がおこり、高血糖と高遊離脂肪酸血症を生じます。
遊離脂肪酸は、インスリン欠乏下の肝では、急速な酸化をうけケトン体に分解されます。

インスリン作用欠乏から始まる流れ、

「インスリン作用の欠乏→拮抗ホルモンの過剰→全身の代謝障害→糖利用低下・脂肪分解亢進→高血糖・高遊離脂肪酸→ケトン体産生亢進→糖尿病ケトアシドーシス」

があり、結果としてケトン体が産生されて高値となるわけです。

ケトン体高値は、始まりではなくて、あくまでも結果なのです。

このように糖尿病ケトアシドーシスの本質は、インスリン作用の欠乏による全身の高度の代謝障害です。

その結果として血中ケトン体が高値となり、全身の高度の代謝障害のため緩衝作用がうまく働かなければ、アシドーシスや脱水となり、重症では昏睡にいたります。

結果としてのケトン体高値が、まるで、始まりであり原因であるかのように本末転倒して受けとめられ、「ケトン体はこわい」という誤解が生じたものと考えられます。

インスリン作用が確保されていて、緩衝作用も働いている限りは、ケトン体は極めて安全な物質です。

しかし、インスリン作用が欠落していて、緩衝作用もうまく働かない病態においては、ケトン体そのものに毒性はなくても、酸性の物質なので結果としてアシドーシスになるということです。

即ち現実には「糖尿病ケトアシドーシス時のケトン体産生の亢進」は、インスリン作用の欠乏が前提にある病態であり、1型糖尿病患者さんのシックデイやインスリン注射を中断したときに起こることがほとんどです。

2型糖尿病では、清涼飲料水多飲による、所謂「ペットボトル症候群」でケトアシドーシスを生じることがあります。

断食や 糖質制限食実践に伴う「生理的ケトン体産生の亢進」の場合は、インスリン作用の欠乏はありませんし、血液の緩衝作用も有効に作用していますので何の問題もありません。

例えば断食の初期は一過性にアシドーシスになりますが、緩衝作用で徐々に補正されていきます。

また、健常人が激しい運動をした場合にも、一過性に血中ケトン体は増加しますが、勿論、生理的現象です。

結論です。

インスリン作用が欠乏していて高血糖を伴う高度の代謝障害は、それ自体その時点で重症です。

この時結果として血中ケトン体が上昇してくれば、アシドーシスも合併して、「糖尿病ケトアシドーシス」となり、さらに危険な病態となります。

一方、インスリン作用が確保されていて高血糖を伴わない血中・尿中ケトン体の上昇は、生理的範囲内の現象であり、人類700万年の歴史のなかで日常的に経験されてきたことなので安全です。引用元ドクター江部の糖尿病徒然日記 

ツボ
糖尿病ケトアシドーシスの症状がでたらすぐに病院へいき治療と検査を受ける必要があります。その前に口渇多飲など明らかに通常よりも逸脱している症状を感じたらすぐにご相談ください。初期の段階であればあるこそ対策はあります。鍼灸でやれることもあります。しかし何よりも先に食生活の改善が必要になります。

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